気候変動への取り組み

2024/8/30 更新

当社は、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、長期ビジョンの基本方針のひとつに「環境負荷軽減対応の強化」を掲げ、第5次中期経営計画の初年度である2021年5月期より、パリ協定の「1.5°C目標」※1達成に向けた取り組みに着手しました。2021年5月期以降の、気候変動に関する取り組みは以下の通りです。

  • 2022年04月 TCFD※2提言への賛同を表明
  • 2022年04月 CDP※3からの環境情報開示要請を受領し、その回答作成に着手
  • 2022年06月 SBTイニシアティブ※4に対して、2年以内の温室効果ガスの削減目標の認定取得を目指すことをコミット
  • 2022年08月 気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative、以下JCI※5)の宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」に賛同し、同イニシアティブに参加
    ➡当社の取り組みについて詳しくはこちらをご覧ください。
  • 2022年12月 CDPから、2022年に実施された気候変動情報開示に対する活動を評価する「気候変動プログラム」において、「B-」スコアを取得
    【CDPによる評価結果】
  • 2023年01月 SBTイニシアティブに、SBT認証取得のための申請書を提出
  • 2023年04月 日本商工会議所のホームページに、「地球温暖化対策行動宣言」を掲載
    ➡詳しくはこちらをご覧ください。
  • 2023年7月 CDP質問への回答を提出
  • 2023年8月 有価証券報告書に、2023年5月期の取組み、実績を記載
  • 2023年10月 SBT認証を取得しました
    【承認レター】
  • 2024年2月 CDPから、2023年に実施された気候変動情報開示に対する活動を評価する「気候変動プログラム」において、「B」スコアを取得
    【CDPによる評価結果】
  • 2024年8月 有価証券報告書に、2024年5月期の取組み、実績を記載

TCFD提言に沿った情報開示項目

ガバナンス 気候関連リスク及び機会に関する組織のガバナンス
戦略 気候変動のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす実際の影響及び潜在的な影響
リスク管理 気候関連のリスクについて組織が特定・評価・管理する手法
指標と目標 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標
  • ※1:2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連機構変動枠組条約第21回締約国会議)で世界約200か国が合意して成立した2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とする国際協定です。
  • ※2:TCFDとは、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指し、気候変動に関する情報開示の項目及び内容について提言しています。
  • ※3:機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトのことです。2000年の発足当初は「Carbon Disclosure Project」が正式名称でしたが、現在はCarbon以外も対象とすることから、略称のCDPが正式名称となりました。このプロジェクトは発足以降、主要国の時価総額の上位企業に対して、毎年質問表が送付されており、企業側からの回答率も年々高まってきております。日本国内でも2005年より活動を始めており、2021年度までは日本企業のトップ500社を対象としていましたが、2022年度からその対象をプライム市場上場会社(約1840社)に拡大しています。
  • ※4:SBTiは、WWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブです。企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進しています。
  • ※5:JCI(https://japanclimate.org/)とは、2018年7月に設立された、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなど、国家政府以外の多様な主体の情報発信や意見交換を強化するためのネットワークです。

「ガバナンス」

当社では、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、気候変動を含む環境課題に関する目標設定等の具体的な取り組み施策や目標達成度の確認等について、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」にて審議・決定するとともに、その下部組織として担当取締役企画本部長の下で「企画本部」がその具体化を進めています。
「取締役会」は、「サステナビリティ推進委員会」で協議・決議された環境課題について報告を受け、E・Jグループの環境課題への対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っています。
代表取締役社長は、「グループ経営会議」の議長を担うとともに、直轄の諮問委員会である「HD経営会議」の議長も担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。

戦略

当社は、総合建設コンサルタント事業(専門技術サービス業)の単一セグメントからなるため、グループ会社全体を対象として、リスク及び機会の特定・評価、気候関連問題が事業に与える中長期的な影響を把握するため、シナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析

  • 分析の時間軸は、当社の長期ビジョンの最終年度である2030年からカーボンニュートラルの目標年度である2050年までの中長期を対象としました。
  • 分析においては、以下に示すシナリオを採用し、政策や市場動向の移行リスク・機会と、地球温暖化による水面上昇や自然災害などによる物理的変化に起因する物理的リスク・機会の特定と財務的影響を定性評価しました。採用した主なシナリオは以下の通りです。
    【移行シナリオ】
    国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑えるシナリオ(SDS及びNZE)
    【物理的シナリオ】
    国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4℃を超えるシナリオ
  • 各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測や、日本政府による各種データにもとづき設定しました。

事業インパクト評価

  • シナリオ分析に基づく事業インパクト(リスクと機会)評価結果は下記の通りです。
  • 2030年の営業利益目標に対する影響程度を大、中、小の3段階で評価しました。
  • 今後、検討の精度を高め、定量的な財務分析に拡張していくことを予定しています。
1.5℃シナリオに対する移行リスク
分類 要因 2030年度における事業インパクト リスク 機会 影響の時間軸 2030年度におけるインパクト 対応策
政策
・規制
①脱炭素社会に向けた規制強化(炭素税の導入等)
  • 炭素税(140USD / tCO2×3700tCO2)の負担額増加(2030年度のスコープ1,2のCO2排出総量に対する課税として想定)
  • CO2削減のための対策費用の増
~2030 CO2排出量の削減(省エネ施設への更新、再エネへの転換、HV・EVへの更新 等)
市場 ②脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大
  • CO2削減・環境負荷軽減事業への参画の可能性
  • 再エネ管理事業への参入の可能性
  • 新技術、新素材の開発の可能性
~2030 脱炭素関連の新規事業への参入、関連研究開発の強化
市場 ③ESG投資の拡大
  • 脱炭素への取り組み姿勢の評価による投資の拡大
~2030 小~中 環境関連施策の確実な実践

※灰色網掛部が機会を、それ以外がリスクを示します

4℃シナリオに対する物理リスク
分類 要因 2030年度における事業インパクト リスク 機会 影響の時間軸 2030年度におけるインパクト 対応策
慢性 ④平均気温上昇
  • 野外での労働条件の悪化に対するコスト増
~2050 野外労働環境の改善、現場作業の省人化の推進、劣悪環境に対する手当の考慮
急性 ⑤集中豪雨に起因する気象災害の激甚化
  • 災害対応業務のニーズ拡大
  • 国土強靭化への対応に関するニーズ拡大
~2050 災害対応、国土強靭化対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化
急性 ⑥降水量の減少
  • 水環境関連業務のニーズ拡大
~2050 水環境関連対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化
急性 ⑦海面上昇、気象災害の激甚化
  • 事業所の土砂・洪水災害リスクへの対応
~2050 事業所の洪水リスクは限定的

※灰色網掛部が機会を、それ以外がリスクを示します

気候関連のリスクと機会に対する対応策

  • 事業インパクト評価により特定されたリスクと機会のうち、インパクトが大きいと判断された機会に対して、現時点で考えられる対策の例を以下に示します。
  • 当社では、長期ビジョンのもと、このような対応を推し進めるとともに、これらの機会を確実にとらえて、SDGs目標の達成につながるサステナブルな世界の進展に貢献してまいります。
分類 要因 対応例
移行/市場 脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大
  • 再エネ(バイオマス)関連計画の拡大
  • 脱炭素を目指した廃棄物処理システムの再構築
急性 異常気象の激甚化による災害発生への対応
  • グリーンインフラ形成
  • 再エネ利用スマートシティ
  • 流域治水計画、立地適正化
  • 河川、砂防施設の更新
  • 避難計画、被害想定、BCP、防災訓練・防災計画の更新
  • 減災計画の見直し
  • 土砂災害対策施設の更新・新設
  • 各種監視、避難誘導、情報伝達システムの新設更新
  • 雨水管理計画の見直し、処理場・ポンプ場施設の更新
物理的/急性 降水量の減少
  • 灌漑事業の拡大
  • 地下水利用計画

「リスク管理」

当社では、気候関連問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクの一つとして位置づけ、影響を及ぼす気候変動リスクを特定し評価するために、TCFDに関連する調査、モニタリングを「企画本部」にて行い、特定された気候変動リスクや対応策について、「サステナビリティ推進委員会」で適切に管理します。その内容は、「グループ経営会議」、「取締役会」へ報告します。

「指標と目標」

<CO2排出量削減目標>

SBT認定取得の過程において、サスティナビリティ推進委員会及び取締役会の審議を経て、目標の見直しを行い、2023年10月にこの目標に対してSBT認定を取得しました。今後、この目標に基づき、長期ビジョンE・J-Vision2030の最終年度である2030年に向けてCO2排出量削減の取り組みを進めてまいります。
目標設定の前提条件は以下のとおりです。

  • 削減目標は、21世紀末の温度上昇を1.5℃以内に抑えるSBT水準を目指して設定しました。
  • 目標達成に向けた基準年は、2022年5月期とします。
  • CO2排出量の算定は、環境省等が策定した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」(Ver.2.4)に基づきます。
分類 SBT認定目標 2030年度
CO2排出量目標
(基準値からの削減率)
基準値
(2022年5月期排出量)
スコープ1
(燃料消費による直接排出)
2030年度までにCO2排出量を42%削減する 1,609(▲42%) 2,774
スコープ2
(電力消費等の間接排出)
スコープ3
(サプライチェーンによる排出)
カテゴリー1(購入品):2027年度までにカテゴリー1のCO2排出量の72.9%を占めるサプライヤーとの間にエンゲージメント目標を設定する
カテゴリー6(出張):2030年度までにCO2排出量を25%削減する 1,354(▲25%) 1,806

それぞれの目標に対する削減方法は、現時点としては以下の通りとしています。

スコープ1(燃料消費による直接的排出):保有するガソリン車の全てをHV車、EV車に入れ替える
スコープ2(電力消費等による間接的排出):全ての電力契約を再エネ電力に切り替える
スコープ3(サプライチェーンによる排出):
 カテゴリー1(購入品):主要なサプライヤーに対して、気候変動に関する情報を提供し、
             CO2削減目標の設定を求める
 カテゴリー6(出張):web会議やテレワークの積極活用により移動量を削減する

<2024年5月期実績> 2024.8 更新

2024年5月期の実績がまとまりましたので報告いたします。
2024年5月期は、保有車両505台中、HV車211台、EV車1台への入れ替えが完了し、低CO2排出車両の比率が40.3%に達しました。また、電力については、使用電力の再生可能エネルギー由来による調達と非化石証書の購入により、全使用量の59%以上の実質再生エネルギー比率を達成しています。これにより、スコープ1,2の排出量は前年度比10.8%の削減、基準値に対して39.5%の削減に至りました。
⼀方、SBT目標としているスコープ3カテゴリー6(出張)については、6%の増となりました。これは、コロナ後の企業活動の活発化による移動の増が原因と考えられます。今後、web会議の活用等、削減に向けての努力を進めてまいります。
なお、スコープ3の大半を占めるカテゴリー1については、今年度以降、サプライヤーとのエンゲージメント目標の達成に向けて活動を開始します。
これからも引き続き、CO2排出量削減に努めてまいります。

分類※ 目標値 実績値 基準値
2030年度 2024年5月期【更新】 2023年5月期 2022年5月期
CO2排出量(tCO2 基準値からの削減率(%) CO2排出量(tCO2 前年度(基準年度)比増(%) CO2排出量(tCO2 CO2排出量(tCO2
スコープ1 直接排出 1,609 -42% 1,116 1,677 -10.8%
(-39.5%)
1,178 1,879 1,142 2,774
スコープ2 間接排出 561 701 1,632
スコープ3 カテゴリー1 - エンゲージメント目標 16,916 -2.8% 17,404 17,427
カテゴリー2 - 目標なし 2,233 -19.40% 2,769 1,325
カテゴリー3 499 -4.2% 521 506
カテゴリー4 111 22.0% 91 120
カテゴリー5 117 69.6% 69 87
カテゴリー6 1,354 -25% 2,815 6.1% 2,654 1,806
カテゴリー7 - 目標なし 514 0.6% 511 479
小計 - 23,205 -3.4% 24,019 21,750
統計 - 24,882 -3.9% 25,898 24,524

※スコープ1(Scope1):燃料消費によるCO2の直接排出
 スコープ2(Scope2):電力消費等のエネルギー消費によるCO2の間接排出
 スコープ3
  カテゴリー1(Scope3 CAT1):購入した製品・サービスによる間接排出(サプライチェーン排出)
  カテゴリー2(Scope3 CAT2):自社の資本財の建設・製造に伴う間接排出
  カテゴリー3(Scope3 CAT3):Scope1,2 に含まれない燃料及びエネルギー関連活動による間接排出
  カテゴリー4(Scope3 CAT4):輸送、配達(上流側)による間接排出
  カテゴリー5(Scope3 CAT5):事業から出る廃棄物の輸送、処理に伴う間接排出
  カテゴリー6(Scope3 CAT6):従業員の出張に伴う間接排出
  カテゴリー7(Scope3 CAT7):従業員の通勤に伴う間接排出

以上

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