サステナビリティ
|Sustainability気候変動リスクへの取り組み
(TCFD提言に沿った情報開示)
当社は、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、長期ビジョンの基本方針のひとつに「環境負荷軽減対応の強化」を掲げ、第5次中期経営計画の初年度である2021年5月期より、パリ協定の「1.5℃目標」※1達成に向けた取り組みに着手したところです。 今年度は、気候変動への取り組みを具体化するための各種検討とともに、以下を進めてまいりました。
- 2022年04月 TCFD※2提言への賛同を表明
- 2022年04月 CDP※3からの環境情報開示要請を受領し、その回答作成に着手
- 2022年06月 SBTイニシアティブ※4に対して、2年以内の温室効果ガスの削減目標の認定取得を目指すことをコミット
- 2022年08月 気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative、以下JCI※5)の宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」に賛同し、同イニシアティブに参加
➡当社の取り組みについて詳しくはこちらをご覧ください。 - 2022年12月 CDP※3から、2022年に実施された気候変動情報開示に対する活動を評価する「気候変動プログラム」において、「B-」スコアを取得
➡【CDPへの回答内容】
➡【CDPによる評価結果】
今年度以降、下記に示すTCFD提言に沿った情報開示を継続するとともに、その精度を高め、CO2削減への取り組みを強化してまいります。
TCFD提言に沿った情報開示項目
ガバナンス | 気候関連リスク及び機会に関する組織のガバナンス |
戦略 | 気候変動のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす実際の影響及び潜在的な影響 |
リスク管理 | 気候関連のリスクについて組織が特定・評価・管理する手法 |
指標と目標 | 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標 |
- ※1:2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連機構変動枠組条約第21回締約国会議)で世界約200か国が合意して成立した2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とする国際協定です。
- ※2:TCFDとは、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指し、気候変動に関する情報開示の項目及び内容について提言しています。
- ※3:機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトのことです。2000年の発足当初は「Carbon Disclosure Project」が正式名称でしたが、現在はCarbon以外も対象とすることから、略称のCDPが正式名称となりました。このプロジェクトは発足以降、主要国の時価総額の上位企業に対して、毎年質問表が送付されており、企業側からの回答率も年々高まってきております。日本国内でも2005年より活動を始めており、昨年度までは日本企業のトップ500社を対象としていましたが、今年度からその対象をプライム市場上場会社(約1840社)に拡大しています。
- ※4:SBTiは、WWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブです。企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進しています。
- ※5:JCI(https://japanclimate.org/)とは、2018年7月に設立された、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなど、国家政府以外の多様な主体の情報発信や意見交換を強化するためのネットワークです。
「ガバナンス」
当社では、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、気候変動を含む環境課題に関する目標設定等の具体的な取り組み施策や目標達成度の確認等について、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」にて審議・決定するとともに、その下部組織として担当取締役企画本部長の下で「企画本部」がその具体化を進めています。
「取締役会」は、「サステナビリティ推進委員会」で協議・決議された環境課題について報告を受け、E・Jグループの環境課題への対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っています。
代表取締役社長は、「グループ経営会議」の議長を担うとともに、直轄の諮問委員会である「HD経営会議」の議長も担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。
戦略
当社は、総合建設コンサルタント事業(専門技術サービス業)の単一セグメントからなるため、グループ会社全体を対象として、リスク及び機会の特定・評価、気候関連問題が事業に与える中長期的な影響を把握するため、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析
- 分析の時間軸は、当社の長期ビジョンの最終年度である2030年からカーボンニュートラルの目標年度である2050年までの中長期を対象としました。
- 分析においては、以下に示すシナリオを採用し、政策や市場動向の移行リスク・機会と、地球温暖化による水面上昇や自然災害などによる物理的変化に起因する物理的リスク・機会の特定と財務的影響を定性評価しました。採用した主なシナリオは以下の通りです。
【移行シナリオ】
国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑えるシナリオ(SDS及びNZE)
【物理的シナリオ】
国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4℃を超えるシナリオ - 各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測や、日本政府による各種データにもとづき設定しました。
事業インパクト評価
- シナリオ分析に基づく事業インパクト(リスクと機会)評価結果は下記の通りです。
- 今年度はTCFD提言に基づく初めての情報開示となるため、精度の高い検討に至っていないことから、2030年の営業利益目標に対する影響程度を大、中、小の3段階で評価しました。
- 今後、検討の精度を高め、定量的な財務分析に拡張していくことを予定しています。
1.5℃シナリオに対する移行リスク
分類 | 要因 | 2030年度における事業インパクト | リスク | 機会 | 影響の時間軸 | 2030年度におけるインパクト | 対応策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
政策 ・規制 |
①脱炭素社会に向けた規制強化(炭素税の導入等) |
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● | ~2030 | 中 | CO2排出量の削減(省エネ施設への更新、再エネへの転換、HV・EVへの更新 等) | |
市場 | ②脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大 |
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〇 | ~2030 | 中 | 脱炭素関連の新規事業、研究開発への参入 | |
市場 | ③ESG投資の拡大 |
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〇 | ~2030 | 小~中 | 環境関連施策の確実な実践 |
※灰色網掛部が機会を、それ以外がリスクを示します
4℃シナリオに対する物理リスク
分類 | 要因 | 2030年度における事業インパクト | リスク | 機会 | 影響の時間軸 | 2030年度におけるインパクト | 対応策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
慢性 | ④平均気温上昇 |
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● | ~2050 | 小 | 野外労働環境の改善、現場作業の省人化の推進 | |
急性 | ⑤集中豪雨に起因する気象災害の激甚化 |
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〇 | ~2050 | 大 | 災害対応、国土強靭化対応の強化、人員のシフト | |
急性 | ⑥降水量の減少 |
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〇 | ~2050 | 大 | 水環境関連対応の強化、人員のシフト | |
急性 | ⑦海面上昇、気象災害の激甚化 |
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● | ~2050 | 小 | 事業所の洪水リスクは限定的 |
※灰色網掛部が機会を、それ以外がリスクを示します
気候関連のリスクと機会に対する対応策
- 事業インパクト評価により特定されたリスクと機会のうち、インパクトが大きいと判断された機会に対して、現時点で考えられる対策の例を以下に示します。
- 当社では、長期ビジョンのもと、このような対応を推し進めるとともに、これらの機会を確実にとらえて、SDGs目標の達成につながるサステナブルな世界の進展に貢献してまいります。
分類 | 要因 | 対応例 |
---|---|---|
移行/市場 | 脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大 |
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物理的 | 海水面上昇への対応 |
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急性 | 異常気象の激甚化による災害発生への対応 |
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物理的/急性 | 降水量の減少 |
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「リスク管理」
当社では、気候関連問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクの一つとして位置づけ、影響を及ぼす気候変動リスクを特定し評価するために、TCFDに関連する調査、モニタリングを「企画本部」にて行い、特定された気候変動リスクや対応策について、「サステナビリティ推進委員会」で適切に管理します。その内容は、「グループ経営会議」、「取締役会」へ報告します。
「指標と目標」
当社は、今回が情報開示の初めての年となるため、2022年5月期のCO2排出量を基準として、長期ビジョンE・J‐Vision2030の最終年度である2030年に向けたCO2削減目標を設定し、事業活動におけるCO2削減の取り組みを始めることとしました。目標設定の前提条件は以下の通りです。
- 削減目標は、21世紀末の温度上昇を1.5℃以内に抑えるSBT水準を目指して設定しました。
- 目標達成に向けた基準年は、CO2排出量を算定した最新年度である2022年5月期とします。
- CO2排出量の算定は、環境省等が策定した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」(Ver.2.3)に基づきます。
- 2022年5月期のCO2排出量は以下の通りです。
排出量 (t CO2) |
構成比(%) | |
---|---|---|
スコープ1 | 1,079 | 4.88 |
スコープ2 | 1,638 | 7.41 |
スコープ3 | 19,390 | 87.1 |
カテゴリー1 | 15,371 | 69.53 |
カテゴリー2 | 1,301 | 5.89 |
カテゴリー4 | 196 | 0.89 |
カテゴリー5 | 42 | 0.19 |
カテゴリー6 | 1,299 | 5.88 |
カテゴリー7 | 1,181 | 5.34 |
合計 | 22,107 | 100.0 |
※スコープ1(Scope1):燃料消費によるCO2の直接排出
スコープ2(Scope2):電力消費等のエネルギー消費によるCO2の間接排出
スコープ3
カテゴリー1(Scope3 CAT1):購入した製品・サービスによる間接排出(サプライチェーン排出)
カテゴリー2(Scope3 CAT2):自社の資本財の建設・製造に伴う間接排出
カテゴリー4(Scope3 CAT4):輸送、配達(上流側)による間接排出
カテゴリー5(Scope3 CAT5):事業から出る廃棄物の輸送、処理に伴う間接排出
カテゴリー6(Scope3 CAT6):従業員の出張に伴う間接排出
カテゴリー7(Scope3 CAT7):雇用者の通勤に伴う間接排出
この前提条件基づき、基準年である2022年5月期のCO2排出量に対して、以下に示す目標を設定しました。
<CO2削減目標>
スコープ1(直接的排出):2030年度までにCO2排出量を35%削減する |
スコープ2(間接的排出):2030年度までに再エネ率100%を達成する |
スコープ3(サプライチェーンによる排出): カテゴリー1(購入品):2024年度(第5次中期経営計画最終年度)までに主要サプライヤーに 環境目標の設定を求める カテゴリー6(出張) :2030年度までにCO2排出量を20%削減する |
それぞれの目標に対する削減方法は、現時点としては以下の通りとしています。
スコープ1(直接的排出):保有するガソリン車のすべてをHV車、EV車に入れ替える |
スコープ2(間接的排出):全ての電力契約を再エネ電力に切り替える |
スコープ3(サプライチェーンによる排出): カテゴリー1(購入品):主要な協力会社に対してSBTに基づくCO2排出量の算出と削減目標の設定を求める カテゴリー6(出張) :web会議の積極活用により移動量を削減する |
2023年度(2024年5月期)より、CO2削減への具体的な取り組みを開始し、ガバナンスやリスク管理に示した方法で進めてまいります。2023年度からの成果は、次回の情報開示から公開を予定しています。
当社としては、脱炭素への取り組みを確実に進めるとともに、この目標の洗練化を踏まえて、SBT認定の取得に取り組む予定です。
以上